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静岡食材で、宇宙日本食をつくりたい!

イシダテック 総務部の小山です。

夏休みですね!そして、夏休みといえば、自由研究ですよね?


焼津には自由研究を後押しする、ある「賞」がある


イシダテックは、

  • ものを見る目

  • 考える頭

  • 作り出す手

この3つを大切にしたいと考えています。
その源泉は弊社創業者が理科や身の周りの自然に対してより関心を持って欲しいと願っていたことにあります。

「焼津のエジソン」とも呼ばれた創業者、石田稔 前会長
発明エピソードは実は時々noteでもご紹介してきました。

良い人材がいなければ何もできない。何か違うところを周りに認めてもらうことで自信をもってほしい。そうやって人が育っていくことが生きがい、と語っていたビデオも残っています。


そこで毎年夏季休暇に合わせて焼津市内の小中学校の児童・生徒に対して助成を行うとともに、科学を好きになってもらうきっかけとなることを強く願い、自由研究への支援を行ってきました

その賞は「石田賞」と呼ばれています。



石田賞は2021年度で67回を数え、毎年「理科研究論文記録集」が小学校の部、中学校の部それぞれ作成されています。

興味・関心を持ち、科学を好きになるきっかけを得た青少年たちを応援しなければ!そんな使命感に近いものは、現在まで脈々と受け継がれています。


昨年度の中学校の部テーマ一覧

焼津市教育委員会においては、自然の事物・現象に対する興味・関心を高めるとともに、自ら問題を見つけ、科学的に探究しながら問題を解決する能力を育てる貴重な学習の機会、とされる自由研究。

論文集には、授業で学んだものを深めるテーマから社会情勢を鑑みたテーマまで、多岐におよぶ研究結果が並んでいます。




今回は「宇宙日本食」の話をします


例にもれず突然の話になりますが……

2022年3月、ある「提案書」を携えて弊社を訪れた方がいらっしゃいます。
資料の名は「小学生が本気で作った!静岡食材で宇宙日本食」でした。





宇宙日本食、とは。


文字通り、宇宙で食べる日本食のこと。
しかし「日本食」という言葉こそつくものの、必ずしも伝統的な「和食」には限定されていないのだそう。(Ex.カレーやラーメン等)

ですがISSに長期滞在する日本人宇宙飛行士が楽しむことで、精神的なストレスを緩和、パフォーマンスの維持・向上につなげるという背景も存在しており、現在28社/団体の50品目が認証されています。


▫「標準食」と「ボーナス食」について
宇宙飛行士が基本的に口にするのはNASAとロシアが用意する「標準食」が主体。それとは別に「ボーナス食」と呼ばれる個別に用意できる食事がある。JAXAは食品メーカー各社が開発した宇宙食を「宇宙日本食」として認証、日本人宇宙飛行士に提供している。

宇宙空間で食べる、故郷の味、のようなイメージか
画像は JAXA HPより引用
記事執筆時点での認証数はわずか50品目



 

イシダテックとの出会いのきっかけ


きっかけはSBSラジオ/IPPOの望月さんからの問い合わせ。

「宇宙食を作りたい小学生がいて、本気なので誰か紹介してやれないか?」

食品関連の機械メーカーである弊社にそうご連絡をいただきました。
IPPOはかつて弊社が出演させていただいた際、ご紹介をいただくとともに、社員の入社にもつながった「ご縁」のあるラジオ番組です。

#機械が好きな人 #機械で何かしたい人 #独自のことをしたい人
という素敵なハッシュタグでご紹介いただいていました。


そんなご縁と偶然が、弊社と増田 結桜さんを繋いでくれました。




増田 結桜さんについて


ここで増田 結桜さんについてご紹介をさせていただきます。

いつもNASAのツナギを着て来社してくれる!

増田 結桜さん
静岡市清水区在住の小学6年生
ご自宅はフランス料理店 Bon Masuda
探求学舎 天文宇宙部所属
趣味:インラインスケート、天体観測
好きな食べ物:静岡みかん ミニトマト いちご 昆布
好きな漫画:宇宙兄弟・宇宙めし!

ちなみに特技はパワポ!
結桜さんの名刺
属性は「宇宙女王」


さらに「宇宙の話をしよう」(作・小野雅裕、絵・利根川初美)
共同制作者のおひとりであり……、


SBSラジオ「きょうの演劇」にも脚本協力をされています。
「宇宙一の料理人」というお話は、結桜さんへのインタビューからインスピレーションを得て作られました。




大人たちを動かしたドリームマップ


今年3月に弊社を訪ねていただいた結桜さん。
石田賞を背景に、もともと興味・関心を抱く方を応援したい!と考えている弊社ではありますが、できることはしたい、そう強く思うに至ったきっかけは資料にある年表です。



本気と熱意に突き動かされて


結桜さんのドリームマップの中央に書かれているのは、

「24才 宇宙飛行士を幸せにできる宇宙食を作る人」

あるきっかけで興味を持った宇宙と、宇宙飛行士の滞在を支える宇宙食。
受け取った資料からも宇宙日本食という形での夢の実現は、決して口先や一瞬の思い付きではない強い気持ちを感じ取りました。

その本気と熱意も私たちを動かした理由です。




宇宙、そして宇宙食に興味を抱いたきっかけ


結桜さんは探究学舎での学びが宇宙へ興味を抱いたきっかけなのだそう。

探究学舎さまはnoteでも発信されている。
五感やストーリーを通じて好きなことを発見できる学習、やりたいことを形にする挑戦である「興味開発」に向けた、高学歴を得るためではない本当の勉強を教えてくれる場所、と説明されている。


結桜さん・お母さま・探究学舎の宮脇さんと
弊社になぜか存在する宇宙スペースの前で




多種多様なテーマに触れた中で出会った、宇宙


探究学舎では様々なテーマに触れることができます。
結桜さんも実際に元素編、戦国英雄編など複数テーマに触れられたものの、
その心を動かしたのは、2020年4月に受講した宇宙編でした。



そんなきっかけで宇宙の存在に興味・関心を抱いた結桜さんは「宇宙のがっこう」という書籍にも出会っています。

その中に登場するのが、JAXAで宇宙食のメニューを考案する女性。
結桜さんはその姿に「かっこいいな。」と憧れを抱いたのだそう。



さらにJAXAのお土産コーナーでももう一つの物語との出会いがありました。

JAXAの「宇宙食開発グループ」にて主人公が活躍する姿を描いた漫画である宇宙メシ!ソラメシ!によってその想いは決定的なものとなり、ドリームマップが完成していきました。


結桜さんは宇宙メシ!に登場する長野県のうなぎ屋さん、やなのうなぎ観光荘さまにも突撃したらしい!工場見学もさせていただけたのだそう!

さすがの行動力と熱意…!




現在は静岡STEMアカデミーでも学んでいる


焼津市に「ディスカバリーパーク焼津」という宇宙に近い施設があります。
ここで開催されている静岡STEMアカデミーでも学びを続けながら、夢の実現へ向かっての取り組みを続けています。

▫️STEMアカデミーに関して:下記申込ページより引用
ワクワク、ドキドキするような未来型科学技術の学びSTEM(科学・ものづくり・工学・数学)を体験してみませんか?そして、君が見つけた「なぜ?」「どうしてだろう?」という疑問や課題を本気になって探求してみませんか?そんな未来の科学技術者の探究活動(自由研究)を支援します!

☆STEM(ステム)は、英語で科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)の頭文字を取った言葉です。




その行動力に共感して


弊社として、結桜さんのサポートとして何かできることはないだろうか、と考えたきっかけは決して「夢を叶えたい小学生だから」ではありません。

それはその興味や憧れ、そして夢に向かって行動を起こす力があるから。
弊社にいらっしゃる以前も宇宙食サバ缶の開発に成功した福井県立若狭高校のみなさんに取材を依頼するなど、自らアクションを起こされていました。



取材後も、結桜さんのアクションは続く


結桜さんのすごいところは、取材を経ても止まらなかったこと。
朝日新聞によると、若狭高校のみなさんの場合は延べ約300人の生徒さんが14年という長期間を費やした長期プロジェクトであったのだそう。

それでもなお、ひとりの手で静岡の食材を使った試作品作りを長期間続けていることは結桜さんの本気度行動力が伝わってきた要因のひとつ。


分量検討のため既存の宇宙日本食の内容量を測定、
夢のため地道な研究も重ねている


今、私たちが抱く想いは、宇宙に食品を届ける人になってほしいこと。
しかし興味から抱いた夢の実現には技術面・費用面などの障壁を乗り越える必要があります。それを乗り越えるために、可能な限りのサポートは実施したい、ということです。


異なる品種を試したり、
とろみをつける方法も複数検討したり…

宇宙食を作るには、技術的な課題も多数考慮する必要があります。
常温での長期保存は可能か?食べ物の形状は?容器含めた視認性は?強度や重量は?と多くのポイントをクリアしていくことは避けて通れない道です。

「みかん」も異なる品種を使用したり、とろみの付け方も複数検討したり、繰り返し試作を続けています。食べやすさや無重力である宇宙空間で体液上昇に伴って起こる味覚の変化など、通常地上で食する食品とは異なる最適化や生産方式まで複合的な検討が必要になります。




「みかんゼリー」を選んだ理由


一番最初にトライされたのは「しぞ〜かおでん」でしたが、現在試作を続けているのは「みかんゼリー」です。
これにも複合的で、論理に基づく理由が存在していました。

  • 長持ちするから
    賞味期限という問題へのアプローチ

  • 宇宙日本食にはデザート系があまりない
    ボーナス食として大きな「食」の楽しみを提供できる

  • みかんの効能
    ビタミンC /β-クリプトキサンチン/リモネンなどの作用によりパフォーマンス向上へ

こういった技術的課題と宇宙日本食の意義双方が考慮されています。


結桜さんの作成した資料より


さらには、みかんにはフードロスも起こっているのかも?という仮説的思考を踏まえ、影響力のある宇宙飛行士の方に口にしてもらうことが、静岡県の特産物であるみかんの人気向上もつながるのではないか?と産業的側面まで考慮がなされています。



パッケージも複数パターンを検討している


パッケージの案として、スパウト・缶詰の2種類を検討しています。
色味や、完食後の容器処理問題まで、複合的に思考を行っています。




結桜さんには、食べてほしい人がいる


そして、結桜さんには「宇宙日本食」が完成したとき、食べてもらいたい人がいる。それが、若田光一 宇宙飛行士

現在ではみかんゼリーのみならず、けんちん汁も作りたい!というビジョンがあり、並行して取り組んでいます。
なぜならば若田宇宙飛行士の出身地、埼玉県の郷土料理だから。


しかしながら結桜さんには「時間」という懸念事項がある。
2022年の宇宙飛行で日本人最多5度目の渡航となり、宇宙滞在日数は日本人歴代1位である若田宇宙飛行士ですが、ご年齢は59歳。食べてもらうために残されている時間はそう長くないかもしれない……




なので、夢を繋いだ


弊社がまずできることは、夢を叶えるお手伝いをしていただけそうな企業のみなさまをご紹介させていただくことでした。


石田缶詰さまを訪れて


まず、同じ焼津市内にある石田缶詰株式会社さまをご紹介しました。



石田缶詰さまは相模女子大学、株式会社サガミホールディングスさまと連携し、実際に宇宙日本食を製作し、JAXAから認証を取得された企業。
食品加工や実生産のプロフェッショナルからアドバイスをいただければ、夢の実現に向けた大きな一歩となる、そう期待して訪問を行いました。


結果は結桜さんの言葉を借りれば、「撃沈だった」


石田雅則社長とお話をさせていただき、課題を見つけることができました。

それは、

  • ストーリーが必要

  • 商品にオリジナル性を持たせたい

  • 協力してくれるスポンサーや団体も必要

というポイントでした。


いただいたアドバイスも生かし、試作を続けています!
石田缶詰の石田雅則社長は宇宙食事情にも大変お詳しく、大きな挑戦が必要なところや工夫を要するところを共有してくださった。
弊社と同じく、資料から溢れる熱意に動かされ、直接お会いする時間をいただき、石田缶詰さまでは食品の製造現場も見せていただきました。

弊社にも石田缶詰さまにも「結桜さんの24歳までの夢を後押ししたい」共通の想いがあります。


その後、静岡ミツウロコフーズ株式会社さまを訪れて


特に大きなポイントである「ストーリー性」「社会的課題」との親和性を持たせるには……。
そこでコンタクトしたのが静岡県下のみかんの搾汁を行っている静岡ミツウロコフーズ株式会社さまでした。


静岡ミツウロコフーズ株式会社さまHP


弊社から静岡ミツウロコフーズさまへのご紹介後はJA静岡経済連さまもご紹介いただき、結桜さんはプレゼンテーションを実施しました。

そこで得た答えが、

  • 静岡県の農作物の消費活性化

  • 宇宙食としてだけではなく、防災食としての側面も持たせること

の2点。そこで静岡県知事に宛てた手紙をお送りしました。
先日焼津市へも相談したところ、「食品製造補助、あるいはブランディングの観点できることがあるかもしれない」とお言葉をいただき、訪問を行うとともに、夢の実現に向けた活動を継続しています。


石田缶詰さまでは実際にパウチもしてもらった
結桜さんの夢、もう遠い先の話じゃないのかも…?




現在抱えている課題


今回結桜さんのことを弊社のnoteで書いた動機は、イシダテックとしてもまだまだできることはないだろうかと考え続けたいということ。
さらにはこのnoteを見て、うちの会社(あるいは個人)にもできる支援やサポートはないだろうか!と多くの方にも考えていただきたかったからです。


解決したい課題も当然まだ存在している


静岡食材に関する支援をいただける方を探しています


「みかんゼリー」「けんちん汁」ともに「静岡食材」にこだわった試作を行っている中で、材料問題は切実な問題になっています。
こちらに関してはぜひこのnoteも通じてサポートしていただける方が増えることも期待して、あえて具体的に書かせていただきます。


結桜さんからお力になれそうなことも
そしてその目は世界を見据えています




みかんゼリー

現在結桜さんが注目しているのが、アカモク

近年ではしずまえ(静岡市の前浜)の水産業も、桜えびやしらすの不漁により先行きが不安視されているのだそう。
全国的に見られるものの、船のスクリューに絡まることで邪魔だとされていた海藻・アカモクはポリフェノールやミネラル、食物繊維を豊富に含有することからスーパーフードとして注目されています。

まだまだ未利用資源であるこの海藻を、凝固剤として利用できないかも検討していますが、手に入れにくい食材。活用法をご検討されている方はぜひ教えてください!

また「みかん」に関していえば、いきなり最適解を見つけるには至らず試作は続いています。静岡県内にも複数産地があったり、品種も多数あったりと様々な組み合わせにトライしていきたいところ。

しかしながら夏場はハウス生産のものに限られてしまい、入手しにくくなることがちょっとした壁となっています。


けんちん汁

けんちん汁は多くの具材を必要とします。(豆腐・じゃがいも・にんじん・こんにゃく・小松菜・ネギ・大根などなど…)
静岡県産を手に入れること自体が難しいだけではなく、コストも高くなりがちであることから、もしできることがある!という方はお声がけいただけると大変うれしく思います。



おわりに

偶然と「ご縁」そして熱意が重なった結桜さんとの出会い。
しかし、応援をしている理由は結桜さんが「小学生だから」ではなく、資料や言葉、そして行動から本気と熱意が伝わってきたからです。
「宇宙日本食」の実現には技術的/資金的側面で障壁が多数存在しています。しかしながら、純粋な興味や憧れから生まれた夢、そしてそれを叶えるための行動力や継続力は口先だけのものではないことがこのnoteをお読みの方にも伝わっていればうれしく思います。

単純な進捗だけでなく、結桜さんの作った「宇宙日本食」が地球から遠く離れた宇宙空間で宇宙飛行士の方の活動を支えたり、楽しみのひとつになっていくこと。そして産業振興のきっかけになることも期待しながら、弊社も密かに応援するひとりとして、可能なサポートは続けていきたいところです。

ご協力いただける方はぜひお声かけくださいね!

▶#チームゆら、そしてWebサイトもできました

▶︎結桜さんのお母さまのTwitter

宇宙漬けな?結桜さんの日々が見れます!

▶︎メディアの出演情報

Daiichi-TV「news every.しずおか」(2022/08/30)

テレビ朝日『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(2022/10/15)


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