[新卒編] イシダテックは、入社50年のレジェンドがいるらしい。(前編)
イシダテック 総務部の小山です。
今回は新卒で入社した社員のインタビューをお届けするのですが……。
入社、半世紀前。
入社は1972年、当時は会社組織も前身といえる石田鉄工所。
さらに現在焼津市坂本にある本社への移転前年でした。
この4月で勤続50年も迎えられ、長きにわたり石田鉄工所、そしてイシダテックを支えてこられた社員のひとり、山村孔信さんにお話を伺いました。
インタビューを通じて、特徴的ないくつかのエピソードも掘り下げながら、その考え方に迫っていきます。
プロフィール
入社経緯は「近いから」?
あると言えばある、ないと言えばないですね(笑)
というのも当時、石田鉄工所(イシダテックの前身)の協力工場をやっていた旋盤加工の会社があって、その息子さんが私と同級生だったんです。
同級生の親父さんが石田鉄工所を知っていたので声をかけてもらいました。
私自身も地元である焼津で就職したかったですし、学校にも募集が出ていたので石田鉄工所への入社を決めました。
山村さんの「引き出し」を作っているもの
入社後、2年間は機械の製造を担当していました。
3年目に異動希望を出し、以来設計を担当してきました。
当時驚いたのは、異動後1年も経たないうちに1本の仕事を任せられたこと。
今は設計担当2〜3人、製造担当3〜4人でチームを組み、プロジェクト制で案件を進めます。ただ昔はよっぽど大きな仕事でない限り、1人で設計を担当しなければならなかった。
それに先輩が隣について、親切丁寧に教えてくれるわけではなかったんですよね。聞けば教えてくれたんでしょうけど、当時の私はそもそも何を聞けばいいのかもわからなかった。
部品のカタログを昼休みに毎日30分くらい読むことを続けました。
それが技術の基礎を作って、たくさんの引き出しになっています。
今って部品について調べようとするときにわざわざカタログは見ない。
インターネット上で検索するというのが当たり前ですよね。
そうするとドンピシャのものが出てくるんですが、逆を言うとドンピシャなものしか出てこない。
私の場合はカタログを読むことで、偏りのない情報が得られたんだと思う。
ページを開くと、いろいろな部品があって、その中から自分が使用するにはどの部品が最適か選択することが必要になってくる。
だから自分がその部品を利用する場面を想像しながら見ていくんですよね。そうすると次は様々な機構が理解できるようになっていく。
そうやって「わかる範囲」がどんどん広がっていくことで、技術者の引き出しが作られていくんだよね。
今では得てきた知識、経験は社内で1番だと思っています。
失敗が許された時代に積み重ねた挑戦
そうですね、それから余分な話になっちゃうかもしれないけれど……、
私が設計を担当し始めた頃は失敗が許されたんですよね。
今はあまり許されないけれど、当時は社内もお客さまも寛容だった。
いっぱい失敗して、そこでもまた引き出しが増えていきました。
昔は接するお客様も、役職が部長よりも上の方が多かったからです。
今は担当者同士のやりとりが多く、問題が起こると当然上席に報告しなければならない。そんな背景で失敗が許されなくなってきています。
あと、今は品質要求もどんどん厳しくなっていますよね。
昔は不具合を起こしてしまったとき、誠意をもって対処するという姿勢が大切でしたが、今はとにかく結果を求められるようになったと感じます。
私は設計って失敗の積み重ねだと思っています。
でも今は多分違うんですよね。
先輩や上司に「こういう設計をする」と事前に報告したり、自分が構想したものをみんなに良いか悪いかの評価を予めもらったりしてから作っていく。
だから、「自分が失敗した」と言う感覚が曖昧になっている。
あとは設計に入ってから、会社が勉強に行かせてくれたこともあった。
そこで今まで見たこともない、考えたこともないアイデアに触れた時、どうにか自分の次の仕事に活かすことができないか考えていた。
1つの仕事を10とすると、そのうちの1は学んだことを使うんです。
それなら、10あるうちの1なので大きな失敗ではないから、チャレンジを繰り返すこともできた。なにせ失敗には寛容だったから、自分に新しい知識を取り入れていくことができました。
あと当時は若いからできたのもあるのかな。
40歳を過ぎた頃からは仕事の規模や責任の重さも大きくなって、やりたくてもできないこともありましたから(笑)
エビの目玉打ち抜きストーリー
はい。お客様は愛知県のせんべい屋さんで、小麦粉を練ってエビを入れたものをプレスして煎餅を作るんです。
その中に目玉が入っていると食感が悪くなってしまうというので、手作業で取り除いていたそうです。その一連の作業を自動化したいというのがお客さまの要望でした。
実は目玉を取ること自体は難しくない。
でも目玉を取るために海老を1匹ずつコンベア上に並べていくのが非常に難しいことなんですね。
例えばネジやボルトなど工業化されたものであれば形が一定ですよね。
でもエビは天然のもの。だから形や大きさも全てバラバラです。
それらを1匹ずつ整列させるのが非常に難しいんです。
そこで、ボウルのようなものの中にルーレットのように仕切ったディスクを入れた機械を作りました。
そこに水とエビを入れてボウルとディスクを一緒に回すと、水が抜けて1つの仕切りに2〜3匹が残る。その次はコンベアに落として、コンベアの速度差で1匹ずつに分ける。
1匹ずつ分けた後は、カメラで海老の画像を識別&目玉の位置を検知して、打ち抜きパンチのようなもので目玉を打ち抜くという仕組みです。
うまくいったな、と思う一方でカメラが海老を読み込めば読み込むほど比較対象が増えて処理速度が遅くなってしまったり、重なっている海老を大きい1匹の海老だと検知して目玉ではないところを打ち抜いてしまったり、というトラブルもありました。
「引き出し」から生まれる新たな構想
そうです。
設計の順序としてまずは、類似した機械があるかないかを調べます。
食品関係の機械に類似するものがあるか調べ、類似した機械が見つかったら、目的に応じてアレンジして使うという感じです。
当時参考にしたのは、25年以上前に静岡県でみかんの缶詰を作るために製作された、「みかんを1個ずつコンベアに乗せる機械」です。
みかんの缶詰は昔から静岡県でたくさん作られていて、民間会社主導のもと、産学官で今の静岡県工業技術センターと静岡大学、と計4社で共同開発をしていました。
そのときに、缶詰に使用できるみかんを選別するためにコンベア上に1つずつみかんを並べる機械を開発していたんです。
この機械の「段階的に個数を少なくして最終的に1個ずつにしていく」というアイデアが海老の目玉を打ち抜く機械につながった。
そして最終的にお客さまにとっても満足していただける機械を納めることができたのが、エビの目玉を打ち抜く機械の話ですね。
今回はここまで
▶おまけ:辞令簿