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AI(深層学習)を利用した装置を筑波大学と一緒に開発してみた<中間レビュー>

総務部のこやまです。
現在イシダテックでは、お客様のご相談、ご依頼を受け、
「AI(深層学習)を利用した検査装置の開発」を行っています。
先日、共同で開発を行っている、筑波大学のみなさんと中間レビュー会を実施しました。今回はその模様をご紹介します!



筑波大学との共同開発スタートのきっかけ


きっかけに触れる前に、「イシダテックの歴史」を少しだけ紐解きます。

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• 1947年、静岡県焼津市にて前身である「石田鐵工所」が創業。
当時は鉄でできているものなら、何でも製作するところがスタートでした。

• 1950年、当時輸出の花形であったみかん缶詰向けに新案機械第一号のシロップ注入機を開発し、特許取得、初の全国展開装置となりました。

・テーマは省力化、省人化。
「機械でできることは機械で。伝統の味を大切に」を合言葉に、独創的なアイデアに基づく装置を次々と開発、納入してきました。

・それ以来、お客様のご要望に合わせた装置を開発、設計、製造。
累計取得特許は82件、実用新案は62件を取得。


「できます!」「やってみましょう!」
そんな一言からお客様のお悩みを解決する方法を一緒に考え、
生産現場にお客様の成長に貢献する「秘密兵器」をお届けしているのがイシダテックです。

ただ、これまでにないアイデアを実現するために「開発」や「研究」は非常に大きなウエイトを占めています。これらを踏まえ、「筑波大学とAI(深層学習)の共同開発を行うことになったきっかけ」に触れていきます。
実はこんなスタートだったそうです。


・ 2018年3月某日
とある食品製造メーカーさんから弊社営業へ、「人にしか認識できないような不良品や未知の異物にも対応でき、手間が非常に少ない検査装置を開発できないですか?」という相談が入る。

↓ ↓ ↓

・ 同日 (30分後)
営業担当が社長へ「できますかね?」と相談。それを受けた社長は、
筑波大学の善甫 啓一(ゼンポ ケイイチ、Zempo Keiichi)助教へ電話相談。

「詳細わからないけど、できると思うよ」
と回答をもらう。


筑波大学/善甫 啓一助教プロフィール


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2008年筑波大学・第一学群・自然学類卒、学士(理学)、2010年同大大学院システム情報工学研究科修了、修士(ビジネス)、2013年同大学大学院、博士(工学)取得。産業技術総合研究所サービス工学研究センター特別研究員を経て、現在、筑波大学・システム情報系・助教としてXperLab(知覚拡張システム研究室)を主宰する。Xtrans tech株式会社代表取締役を兼務。立体音響や音のAR技術、リモート技術、障害支援、サービス計測・支援、情報推薦・意思決定支援など、人間の知覚拡張、物理空間の複層化が研究テーマ。

↓ ↓ ↓

・同日 (5分後)
社長から事業推進室所属の中原さん(当時:入社4か月目)に相談。
「できると思いますけど、AIかぁ。(うわあ……出ました。バズワード。こうやって本気でもないのに、あるんですよねぇAI使えばなんとかなると思ってるのが。第一AIや機械学習の定義も曖昧ですよね。それがオペレーションズリサーチなのか、それともエージェントを使ったモデルなのか、ニューラルネット使ってるのか、ちょっと待てよまさかないだろうな、よく社長がやるモンスター条件分岐のExcelみたいなアルゴリズムは……。アラン・チューリングもびっくりですよ。そういえば、自宅のフグは元気かな?先日、会社のモニタ1枚に水槽をリアルタイムHD配信して壁紙にしたら、中原のPCだけデータ使用量が外れ値って言われちゃった。ラズパイ2で実装したけどスペックが足りなくて綺麗な画質で30fps出なかったんだよね。でもフグの位置がとびとびになるのも嫌だったから無圧縮配信にしたのがまずったなぁ。家もNURO光だし、この会社も回線細くないからいっかと思ってたけど、早く何とかしないとなぁ。模様とかで個体認知もしたいし、フグの気持ちがわかるようにもなりたいな。フグは視線や動きでわかりやすいと思うんだよな……。あぁ、そういえばAIについて聞かれていたっけな。まあ仕事でやるのも面白そうだしいっか。はい……、やってみますかぁ」と遠い目をされた。


中原さんに関しては下記noteにて。
NHK高専ロボコン大会で「大賞」を受賞した若きエンジニアです。


とまあ30分ちょっとの間にこんなやり取りが実際に行われたらしく……(笑)
提案・調整を経て、2018年7月に食品製造メーカー様より正式に発注いただき、深層学習型の教師ありAI搭載のプロジェクトがスタートしました。

スタート以降は段階を踏んで順調に実証実験を繰り返し、
複数の製造拠点に「教師あり」方式の深層学習型AI搭載の検査装置を実際に導入しました。


「教師あり」から「教師なし」へ


今回のプロジェクトに関するご説明にあたって、「ご依頼主である食品製造メーカー様が本当に実現したいもの」はこの記事を読まれている方にもご理解いただく必要があります。

・食品製造現場では、良品と不良品の検品が実施されている

・これまで人の判断でしか検査できなかった対象を、AIで検品する装置
は2019年に完成、導入した

・しかしAIに対して「良品」と「不良品」を人が事前に教えるのが大変。
さらに、人間が経験したことのない不良品をデータとしてAIに教えることは不可能

・そこで「何が正解か」事前に教えなくても正解を導き出すような検査装置を実現したい

・これまで様々な手法を取り入れ試行したが、もうひと工夫したい。
開発スピードを上げ、実用化するために、イシダテック(および筑波大学に)に手を貸してほしい


正解、という単語が出てきますが、ここでは「教師ありAI」作成時、
装置に教える「正解」=「不良品」のことを指しています。
ですが、教えるための不良品は通常ほとんど発生しません。
下記のように、非常に低確率で生まれてしまうものに過ぎないからです。

これほど低い発生確率では、「不良品=正解データ」を集めるには
膨大な時間を要してしまいます。そこで、「何が正解か」事前に教えなくても正解を導き出せるAIが求められることになりました。

【製品A】
約4ヶ月間で905万個生産→不良品発生数56個(発生確率:0.00062%)

【製品B】
製品Aと同期間に270万個生産→不良品発生数26個(発生確率:0.00096%)


不良品が出ないなら作っちゃえ


先に示した通り、開発を急ぎたくとも、
「不良品=正解データ」を集めるには膨大な時間がかかります。

「じゃあ不良品データを人工的に作るソフトウェアをつくっちゃおう!」ということで、実際に開発しました。

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AIは、
「過去に起きた異物混入」「過去に経験した不良品」は学習できるものの、前代未聞、未知の不良品には対応できません。

そこで「不良品=これまでだったら人にしか判断できないこと」を自ら判断できるAIの実現を目指し、イシダテックと筑波大学で共同開発を進行させています。

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最終的には、

・正解できる処理モデル(アルゴリズム)の開発を継続する
・処理結果を定量化し、性能を客観的に捉えられるようにする
・上記をハードウェアと融合して装置として成り立たせる

全てを兼ね備えた検査装置の実現に向けて、研究開発を加速させています!
中間レビュー会の開催を踏まえ、イシダテックの開発スタイル・開発事例の一つとしてご紹介でした。

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